レッスンでは、はじめての方も、どんなに慣れている方も、まずは呼吸から始めます。
呼吸によって得られる様々な利益や機能については「Body and Mind」のカテゴリーの呼吸についての記事で触れていますので、そちらの記事を参考になさって下さい。
その後、骨盤や背骨の話、コアが入ってくる感覚などをチェックしたり、小さく骨盤を動かすことなどを行っていきます。
その中でも今回は骨盤の小さな動き、ペルビッククロックについて書きたいと思います。
ペルビッククロック、とは、仰向けに寝た時に骨盤を時計に見立てて、12時から6時、3時と9時、時計回りに一周、反時計回りに一周、というように、骨盤を色んな方向に傾ける練習です。
ピラティス!体幹トレーニング!汗だく!激しい筋肉痛!ワークアウト!やった感!
みたいなものを期待して来られる方には、なんだこれ、なんの練習だ、と思われてしまいそうな動き(かつて自分自身もピラティスを始めたばかりの頃はそう思ってしまっていました。)ですが、とっっっっっっても重要な意味があります。
骨盤は、大きく分けると、左右の寛骨、真ん中の仙骨、に分けられます。
(引用:Wonda 人体)
左右の寛骨は深いくぼみ(ソケット)の中で大腿骨(太ももの骨)とつながり、仙骨は上部で腰椎(腰の骨)とつながります。
(引用:Wonda 人体)
ということは、ペルビッククロックで骨盤を傾ける、というのは、骨盤のみならず、大腿骨や腰椎との境目(股関節と腰仙関節)にも影響がある、ということができます。
たとえば骨盤を12時の方向(後傾)に動かした場合
仙骨と腰椎の間は離れて行き、腰椎は減圧されていきます。
大腿骨が寛骨より後ろに移動し、股関節は伸展して(伸びて)いきます。そのとき、寛骨のソケットが大腿骨頭の周りで後ろに回転し、ソケットの前側の関節唇の方に移動します。
6時の方向(前傾)に動かすと
仙骨と腰椎の適合性は高くなり、お互いががっちり手を取り合います。
大腿骨は寛骨の前に移動し、股関節は屈曲して(曲がって)いきます。そのとき、ソケットが大腿骨頭の周りで前に回転し、大腿骨頭はソケットの後ろ側に沈みます。
3時の方向(骨盤が左を向く)に動かすと
腰椎に対して骨盤が左を向き
右のソケットは大腿骨の周りで左周り(内回り、背骨の方に回る)骨盤に対して大腿骨は外旋し、骨頭がソケットの仙骨側を触ります。
左のソケットが大腿骨の周りで左周り(外回り、背骨から離れる方向に回る)骨盤に対して大腿骨は内旋し、骨頭はソケットの外側を触ります。
6時は3時の逆。
時計回り、反時計回りは、これらのことが徐々に角度を変えながら起こります。
さらに呼吸によって仙骨と寛骨の間の仙腸関節のわずかな動きも起こり、骨盤とそれに関連する関節の感覚、可動性を引き出します。
関節は圧を加えて動きを作ることで関節液が出て動きがなめらかになったり、普段あまり動かさない方向へ動かすことで「固有感覚受容器」と呼ばれる感覚を司る器官を目覚めさせてあげることができます。
もちろん、足や胸ではなく骨盤が動く、というコントロール力、細かくて繊細な動きを引き出すための筋肉の使い方も必要です。
いつも腰を丸めてイスに座って1日中作業をされている方が例えばいたとして、その方はいつも骨盤が後傾し、大腿骨頭がソケットに沈む機会を逃しているかもしれない。足を組むくせがあれば、いつも上になる足の骨盤が高く、両足の骨頭はいつも外側を向き、内側の関節は乾いて動きが悪くなっていくかもしれない。
その人は腰痛持ちで、歩くと股関節の前側や外側が痛くなりやすいかもしれない。
となったときに、ペルビッククロックで関節の動きがよくなったり、動きを認知することができるようになれば、結果、腰痛や股関節痛などに変化を起こすことがあるかもしれません。
詳細については書ききれませんが、仙骨の動きは足首や首などとも関係があったりするので、このような小さな動きが全身に影響を及ぼすという例は枚挙に暇がありません。
その形にしよう!と力むことは時に余計な力を使い、エネルギーの効率が悪い上、代償を招いて痛みを引き起こす場合があります。
まずは大きな表面の筋力で何でもかんでもやろうとせず、小さな深い部分の働きを高めた上で、必要な分の外側の筋力を引き出していくことが大事です。
自身の身体を向き合って技術などを向上させようとするなどの経験をされたことがある方は、ワークアウト(外側のトレーニング)と同じくワークイン(深い部分を探る)の必要があることはご存知と思います。
普段運動をあまりしない高齢者の方であろうが、プロフェッショナルなレベルの若いダンサーであろうが、レッスンではペルビッククロックのような小さなものをやるし、それは退屈なものではなく、とっても身体にいいんですよ。という、長い記事のわりに雑な結びの言葉でおわります。
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