前庭規管が行う反射について書いていきますが、その前に簡単に三半規管と耳石器について書きます。
三半規管(前半器官、水平半規管、後半器官)
・前方向、水平方向、後ろ方向への移動の加速度を感知
耳石器(卵形嚢、球形嚢)
・頭の傾きを感知
・垂直方向の動きを感知
・前後左右方向への移動を感知
三半規管と耳石器の違いは、動いてすぐに反応するのが三半規管、しばらくその位置でホールドすると反応するのが耳石器です。
例えば、頭を右に傾けてキープする。という動作は
傾ける瞬間は三半規管が、キープしている間は耳石器が反応します。
(超ざっくり説明です)
では反射について書きます。
①前庭動眼反射(VOR)
「動きに対して目の動きを安定させる反射」
通常私たちは頭や身体を動かしていても、見ている景色を安定させる反射が起こります。
走っていても看板の文字が揺れずに読めますよね。
高度な手ブレ防止機能が私たちの身体には備わっています。
目が悪い人、頭がいつも傾いている人はこの反射を確認します。
VORを細分化すると
・A-VOR
上下左右ななめに頭を動かした時に目はその反対側へ動く反射(三半規管由来)
カレンダーの数字など、目標物を見たまま、頭を上下左右斜めの8方向へ動かしてみてください。目が目標物から動いてしまう場合はこの反射に問題があるかもしれません。
・L-VORまたはT-VOR
身体が上下方向へ移動するとき(ジャンプやスクワットなど)目を見たいものを見続けておく反射(耳石器由来)
カレンダーの数字などを見たまま、ジャンプしたりスクワットしたりしてみます。数字がぼやけて見える場合などはこの反射に問題があるかもしれません。
・OCR
頭を傾けた時に目が反対方向へ回旋する反射(耳石器由来)
頭を傾けたままカレンダーの数字を見ます。そのまま15秒ほど待ってだんだん数字が見えにくくなってくる場合、この反射に問題があるかもしれません。
②前庭頸反射(VCR)
「頭の動きに対して首の動きを安定させる反射」
頭の動き(特に左右へ首を振ったり縦方向にジャンプした時など)を感知した時、目の筋肉、首の筋肉、に働きかけ、頭、首、目の動きを協調させています。
例えば、カレンダーの数字を見たまま頭の位置を固定し、首から下をでんでん太鼓のように左右に回旋させるような動作で発火します。腕をブランブラン振ったりして。
首が痛い人にはこの反射が起きているか確認します。
③前庭脊髄反射(VSR)
「頭の動きに対して背骨を安定させる反射」
全身の伸筋群の働きを調整する反射です。ふらついた時など、前庭からの入力で身体を立て直す能力に影響します。
片側の腰や膝などが痛い場合はこの反射がきちんと起きているか確認します。
ここに書いた反射のどの部分がうまく起きていないのか、細かくチェックしていくことで、例えば右の前半器官と左の後半器官の働きが弱いね。左へ頭を振る動作をしてみて身体の動きや痛みがどう変わるかな??
などとチェックしていきます。
また前庭覚の情報は
前庭規管のレセプター→前庭基底核(脳幹)→小脳→島皮質
と伝達されていくので、前回の記事に書いた、不安感や自分の身体が自分でないような感覚などは最終的に島皮質という場所の刺激が足りないことで起こっていることかもしれません。
島皮質は脳の中のあらゆる箇所とのコネクションが強く、感覚に感情の意味づけをしていたり、自律神経の働きの調整をしたりしている場所です。(超ざっくり)
左右の脳幹や小脳の働きと併せて考え、どの向きに、どのくらい動かすと良いのか、ということを考えたりもしますが、この辺は自分でのチェックには限界がありますので、神経学のトレーナーのお世話になるのが早いですね。
次回は視覚について書きます。