前々回では脳のお仕事は身体を守ることですと言う話を
前回は神経の働きは3つだけだという話をしてきました。
そして根本解決につなげるには、脳が集めているインプットの情報精度を上げていくことでアウトプットが変わるというお話をしていきました。
今回はインプットの種類についてお話しします。
インプットはざっくり3種類あります。
①外受容感覚
五感と前庭覚
②固有受容感覚
関節のポジション、動きの感覚、筋骨格
②内受容感覚
心拍、呼吸、内臓、体温、身体の所有感
この3つの感覚の何かが不足すると、脳が安心できず危険を感じ不調を作り出してしまうかもしれません。
逆に言えば、これだけアプローチできるインプット情報があるとも言えます。
この中でも特にトレーニングできる感覚として、3つの感覚をご紹介します。
1.視覚
そのままですね。目でみえているもの、です。
2.前庭覚
バランス感覚やスピード感覚です。
目を閉じていても、電車が前に進んでいるか、横向きに座っているなら右へ進んでいるか、左なのか、分かりますよね。目を閉じていてもエレベーターが下に行っているのか上に行っているのかも分かると思います。自転車で坂を下る時と登る時のスピードの違いは目を閉じていても分かりますよね。それが前庭覚がキャッチしてくれている感覚です。
3.体性感覚
触覚と固有受容感覚を併せて体性感覚と言っています。身体動いてますよ、ここにありますよセンサーとでも言いましょうか。
触覚は触られる感覚、固有受容感覚は関節がどの位置にあるか、筋肉がどのくらい収縮しているか分かる感覚です。
細かく見ていきます。
1.視覚
私たちはありのままの世界を見ていません。
身体を通じて感じている世界を「こうであろう」と解釈しています。
毎日通勤する場所にある雑草が、ある日花が咲いていても気がつかない。
バレエの先生のお手本を見ているつもりで、足元しか見ていない、その時の背骨や腕や指先や目線、音の中でどんな風にそれを移り変わらせているか、見えていないから、先生の踊りとは何か違う。
見る、とは感覚機能と運動機能のダイナミックで相互的なプロセスがあり、目を介して姿勢や動きを同時制御し、周りの状況操作や高度な認知と思考に関わるものです。
それが何か分かる、空間の中で距離感が分かる。
見たいものの方へ身体を動かす。ごく自然に私たちがやっていることです。
視覚は3つのトレーニングできるインプットの中でも脳に与える影響がとても多く、7〜9割は視覚からの情報に頼っていると言われています。
太ももの筋肉を動かす神経は1本につき4,000本の筋繊維を動かす。
繊細な動きが要求される手の筋肉を動かす神経は1本につき100本の筋繊維を。
しかし目の筋肉の場合は1本の神経につき1〜10本の筋繊維を動かすと言われています。
実は身体の中で最も繊細に働く筋肉が目の筋肉。
それだけ正確に動きたいために、神経の数が太ももとはけた違いの数になっているのでしょう。
目の使い方の癖は身体への影響が無意識レベルで非常に大きいです。
2.前庭覚
前庭覚は
頭の動きに対して目を安定させる。
頭の動きに対して首を安定させる。
頭の動きに対して背骨を安定させる。
というのが仕事になります。
三半規管と耳石器という言葉を聞いたことがある人が多いと思いますが、前庭覚は耳の中にセンサーがあります。つまり頭の左右にセンサーがあります。
この働きが左右で違っていると、頭の位置が真ん中に来ません。(実際には目を開けて見ているので視覚に修正されて頭は真ん中にいることもありますが、その場合も目を閉じると斜めを向いたり傾くことがあります。)
身体に左右差がある場合、左右の前庭覚のどの部位の刺激が足りないのか、チェックしていくことは必ず必要になってきます。
天気病?のような、気圧の変化で体調を崩す方もここの働きが落ちていると考えられています。
ちなみに、前庭覚はバランス感覚と書きましたが、バランスボールの上やバランスパットの上でバランスを取るようなトレーニングは、前庭覚(バランス感覚)のトレーニングにはなりません。頭の位置が変わらないと前庭覚は鍛えられないので、バランス感覚を鍛えようと思ったら頭を動かすものを選びましょう。
眼を閉じたまま、両足を閉じて立ち、頭を上下左右に振るとか回すとか。ベッドでごろごろ転がるとか。ブランコに乗るとか。
3.体性感覚
視覚や前庭覚は頭部にあるセンサーでしたが、体性感覚のセンサーは全身に広がっています。
触覚には、熱や圧、振動や痛み、優しく気持ちよい感覚、危なくて不快な感覚など、それぞれの種類の刺激をキャッチするセンサーがそれぞれあります。
鍼やマッサージはこの仕組みを使って身体が楽になる(=脳がもらえる情報が増えて安心する)を作っています。
固有受容感覚はピラティスやヨガやランニングや筋トレ、マッサージや整体などがここへのアプローチです。
固有受容感覚のセンサーのは関節内に多く含まれています。
関節を動かす、関節の可動域があることが身体の認識を上げ、脳がその情報があることで安心するためにまた可動域を制限せずに使わせることができます。
筋肉は関節を動かすためにあるので、関節が動かない状態で筋トレばかりしていても思うような筋肉の使い方を学習できないばかりか、逆に関節の可動域を狭め、関節からの情報がもらえずに不明瞭なマップを作り出してしまうと脳はそれを脅威と感じ、さらに関節を動かさないでおこう、と判断してしまうかもしれません。もったいないことに…。
これらの感覚へアクセスし、どの部位のどの方向へのどんな刺激が足りていないのか、または過剰な刺激となっているものがあるのか、を適切に調べることは、身体をより良い方向へ導くみちしるべとなります。
以前に運動能力や知能を高めたいとか、集中力をつけたいとか、自己効力感を高めたいとか、そういったものの土台になるのが感覚なんですよ、とブログに書いたことがありました。
感覚を統合するとできることが増える - Yukikoのブログ
今回の話もそれに通じる話です。